モラルハラスメントやパワーハラスメントが強く問題視されるようになってきました。
夫婦、親子、上司部下・・・今まで当たり前だと思っていた関係性も、改めて考えていく必要があるのかもしれません。
そこでコミュニケーションを考える時に、「ダブルバインド」について知っておくことは役に立ちます。
今日はダブルバインドについて紹介し、モラハラ・パワハラへの対応方法、そして自分がモラハラ・パワハラをしてしまっていないかをチェックしていきます。
ダブルバインドとは?
日本語訳では「二重拘束」という意味です。
例を挙げると以下のようなコミュニケーションです。
・不登校の子どもに母親が「今日は学校に行く?行かない?あなたが決めても良いのよ?」と聞いて、子どもが行かないことを選択すると、非常に不機嫌になったり説教をしたり涙を流したりする
(→「あなたが決めても良い」と言いつつ、行かないと母親がネガティブなコミュニケーションを取ってくる)
・何でも逐一報告して指示を仰げ、と上司は言うが、指示を仰ぎに行くと「自分で考えることもできないのか」と嫌みを言われる
・飲み会に行く許可を妻にもらおうとしたら、「行っても良い」とは言うものの、飲み会の日は非常に不機嫌になる
・夫が妻に謝罪をするように言い妻が謝罪をすると「自分の意思もないのか!」と怒る
このように、2つの矛盾するメッセージを同時に送ることをダブルバインドと言います。
不登校の子どもの例だと「学校を休みたい」という自分の気持ちを通そうとすると母親が不機嫌になり、子どもにとってはストレスがかかります。
学校に行く、という選択をすれば母親の機嫌は良くなるでしょうが、そもそも自分は学校には行きたくないのでストレスがかかります。
これでは子どもはどちらも選択しても辛い思いをするわけです。
それでも「選択」を迫られているので選択をしないといけませんが、母親が不機嫌になっても学校を休む、という選択をするのはとても勇気がいることです。
結局学校に行くことを選択することになりますが、自分が「選択」をしたのでその責任も負わねばならないのです。
読んでいただいたらお分かりだと思いますが、ダブルバインドは受ける側は非常にストレスのかかるコミュニケーションの方法です。
モラハラ・パワハラはダブルバインド的なコミュニケーション
モラハラやパワハラはまさにダブルバインド的なコミュニケーション方法です。
例えば、妻にモラルハラスメントをしている夫が「お前のせいだ」「お前がだめだからこうなる」と言い続けたとします。
そのような環境にいると、妻の自尊心はどんどん下がり、夫に対する恐怖心が芽生えます。
そんな時に夫が妻に「どうしてこうなったか自分で考えてみろ」と言ったとします。
妻は「私がだめな妻なのでこうなりました」と答えます。
これは妻が自発的に思ったことというよりは、夫が妻に思わせた、言わせたセリフではありますが、夫は「お前が自分で考えて出した答えだ、認めたんだ」とさらに妻を追いつめます。
妻の方も、夫に言わされたことには気づかず「自分でも私はだめな人間だと思う」とどんどん深みにはまるのです。
このように、あたかも自分で選択をしたかのように見えますが、実際はストレスの高いほうを「選ばされてしまう」というのもダブルバインドの怖いところです。
モラハラ・パワハラ的なコミュニケーションの対応方法
まず第一に「関わらないこと」ですが、そうもいかないと思います。
モラハラがひどい配偶者とは距離を置く、などは当然すべきだと思いますが、まだやり直せる関係性であったり、仕事上の関係性である場合は、何とか対応していくしかありません。
①選択肢をこちらからも提示する
不登校の例で考えてみましょう。
「学校に行く?行かない?あなたが決めても良いのよ?」
と言われた時、母親は当然のように選択肢が2つかのように話していますが、実際は選択肢はもっとありますよね。
「午後からなら行けそうだからそうする」
「少し考えたいから時間をちょうだい」
「先生に電話で相談して決めたい」
「保健室になら行けそう」
「今日は休んでお母さんと一緒にいたい」
などなど、選択肢はたくさんあります。
提示されたものだけで決める必要はないので、意見を出してみるのも一つの手です。
②相談をしてみる
上司に「毎回指示を聞け」「少しは自分の頭で考えろ」と矛盾した叱責を受けている、など「どうしたら良いんだ!!!」となりますよね。
このような場合は「相談してみる」のはおススメです。
「考えてみたのですが相談をしても良いですか」
「分からない部分があって相談したいのですが」
とこちらから持ち掛けていく方法ですね。
上司からの矛盾した叱責は「自分の考えに合わせろ」という強制でもあるので、こちらの考えを伝えつつも上司に助けてもらえる関係性を作るための作戦です。
あなたはモラハラ・パワハラになっていない?チェックしてみよう!
自分がそのような関わりになっていないか気になる、なっていたら訂正したい、という方は以下のポイントをチェックしてみて下さい。
・クローズドクエッションになっていないか?
不登校の例で説明すると、「学校に行く?行かない?」はクローズドな質問です。
これでは相手に選択を迫る言い方になってしまいます。
クローズドクエッションになっている場合は要注意!
オープンな質問を心がけてみましょう。
例えば不登校の例だと、「どんな感じ?」と朝に声をかければ「今日もしんどくて行けないよ」「今日は気分が良いよ」など、子どもは自由に返答ができます。
・自分ばかりが話していないか?
明らかに自分が話す方が多い場合、相手は言いたいことが言えない緊張感を感じているのかもしれません。
相手の返答を待ったり、「どう思う?」と気持ちを聞いてみると良いかもしれません。
・自分の中で答えが決まっていないか?
不登校の例で言うと、母親は「学校は行くべきだ」という自分の中の考えがあり、子どももそう思うべきだと考えています。
そうではなく、母親には母親の、子どもには子どもの考えがあるはずです。
自分の考えを主張するのは良いのですが、それであれば「お母さんは学校に行けたほうが良いと思っているんだけどあなたはどう思う?」とはっきり伝える方がまだ良いです。
暗黙の了解で相手に察してもらい都合の良い返答を引き出すのは、とてもストレスを与えるコミュニケーションとなります。
・早口になっていないか?
早口でたたみかけるような言い方だと、相手は怯えてしまいます。
あなたのほうが年上であったり立場が上ならなおさらです。
ゆっくりと話すことを意識してみて下さい。
・大きな声になっていないか?
楽しい時の大きな声なら良いのですが、叱責する時は良くないですね。
大声で怒鳴ることに効果はなく、相手を委縮させてしまうだけです。
「叱る」というのは、何が悪かったのかを説明し考えさせることです。
「指導」というのは、相手の成長を促進させるためのものです。
怒鳴ることではどちらも得られませんし、あなたを「怖い人」にしてしまいます。
これらをチェックして行動を変化させていけば、無意識のうちにしているハラスメントはある程度防止できると思います。
コミュニケーションは誰でも癖があり、一度身に付いたものはなかなか消すことはできません。
まずは自分がダブルバインド的なコミュニケーションを取っていないか、意識してみて下さい。