旅ごころブログ🐒

心理カウンセラーをしている筆者が心理学の知識を紹介するブログです。趣味の旅行で行ったおすすめスポットや飲食店の紹介もしていきます。

閉鎖病棟‐それぞれの朝‐ネタバレ感想 精神科医療現場で働くカウンセラーのリアルな感想

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閉鎖病棟‐それぞれの朝‐」

見てきました!

精神科の閉鎖病棟を舞台にした作品、ということで気になっていたのですが、ようやく行けました。

 

精神科を舞台にした作品は、とってもリアルに再現できている部分もあれば、「そんなわけない」と笑える場面まで、実際の現場で働いているのと照らし合わせて考えるととても面白いです。

 

今日は「閉鎖病棟‐それぞれの朝‐」の感想を書いていきます。

 

 

 

閉鎖病棟‐それぞれの朝‐ あらすじ

舞台は長野県のとある精神科病院

そこには様々な事情を抱える患者が入院しています。

 

この物語の中心となるのは、妻と母親を殺して死刑判決を受けたけど生き残った秀丸笑福亭鶴瓶)、幻聴が原因で発作を起こすようになり入院をしているチュウさん(綾野剛)、義父の虐待が原因で不登校になり母親に連れて来られた由紀(小松奈々)

 

苦しいことに耐えられずに発作を起こしたり、自殺をしようとしたり、心乱れることはあっても、病棟という空間で患者同士心を通わせながら暮らしていましたが・・・

ある時秀丸が病棟内で殺人事件を起こしてしまいます・・・

そして・・・

 

病棟という特殊な空間、社会的入院の実情、傷を抱えて生きるということ、様々な問題提起をしてくれる内容です。

 

 

閉鎖病棟‐それぞれの朝‐ネタバレ

※ここから先は完全にネタバレです※

 

 

 

小松奈々演じる由紀は義父の性的虐待に苦しんでいました。

実の母親はそれを知っていながらも黙認し、娘である由紀が疎ましかったために精神科病院へ入院させました。

 

そんな由紀は、秀丸とチュウさんと心を通わせていきますが、ある時病棟にいる薬物依存症患者である重宗に強姦をされてしまいます。

その後由紀は姿をくらますのですが、この事実を知ったチュウさんは事態の重たさに耐えられず、秀丸に助けを求めます。

そして秀丸は「俺が片をつける」「このことは誰にも言うな」と、重宗を殺害するのです。

 

当然秀丸は警察に捕まります。

チュウさんはこの事をきっかけに、認知症初期の母親の面倒を見るために妹夫婦の反対を押し切って退院します(任意入院だったようです!)

そして秀丸の裁判を聞きに行ったら、なんとそこには行方知らずになっていた由紀の姿が。

 

由紀は現在は看護師の見習いをしており、秀丸の弁護士に連絡を取り証言台に立つ決意をしたのです。

 

証言台では、自分がいかに秀丸に世話になったのか、自分は被害者に強姦をされて、それを知った秀丸が被害者を殺害したこと、秀丸に生きていて欲しいこと、ずっと待っていることなどを証言しました。

 

映画のラストは何十年も車いすだった秀丸が、懸命に車いすから立ち上がろうとするシーンで終わっています。

 

 

閉鎖病棟‐それぞれの朝‐ 精神科医療現場で働くものの感想

私は精神科病院へもう10年以上勤務しているので、やはり色々と考えることがある映画でしたねー。

 

まず、秀丸が由紀に出会ったばかりの頃に言う言葉・・・とても印象的です。

「ここは不思議なところ。みんな患者という生き物になっていく。帰れる場所があるなら帰ったほうがええ」

と話すんですが、うーん、これはすごい分かる!という感じです。

 

入院をすると確かに「患者」になります。

 不思議なんですが、人間の適応力なんでしょうか。

病棟は本当に非日常です。

状態の悪い人が暴れたり叫んだりすることもありますし、外出も許可制、薬を飲んだら口内確認・・・

それがそこに入っていくと、いつの間にか日常になるのでしょうか。

私たち支援者も、病棟で過ごす時間が一日の大半を占めるので、いつの間にか非日常が日常になっていますが・・・

 

そしてリアルだった一幕が「カラオケ大会」です。

病棟内のカラオケ大会を患者さんたちが楽しみにしていて、飾りつけの中唄う場面があるのですが、どこの病棟でもレクリエーションでカラオケは大人気!

とくにカラオケ大会は一大イベント。

みんなが楽しみにしています。

病棟内のレクリエーションがリアルに再現されていて面白かった場面です。

 

登場する患者様も演技に深みがありました。

自分の思いを言葉に表現できずにむずむずする患者様、家族のもとへ遊びに行く、と外泊を繰り返す女性には実は家族はおらず、カプセルホテルに泊まるための外泊をする患者様、人間のもどかしさを描いているなと思いました。

 

一番私が上手いな、と思ったのは綾野剛演じる「チュウさん」です。

チュウさんは病棟内では大人しく自立度の高い患者様のようでした。

外出も比較的自由にできていましたし、服薬も管理は看護師でも口内確認はされていません。

他の患者様の言動を深くは気にせず流すこともでき、自分よりも弱い患者様を守り可愛がります。

しかし、家族が会いに来て衝突した後、強いパニック発作を起こしたり、由紀が強姦された時には抱えきれずに秀丸に抱き着きます。

刺激の少ない穏やかな生活だと、大人としての振る舞いができても、動揺することが起こるとそれを心で抱えることはできない、処理することはできない、そんな脆弱性統合失調症の方にはあります。

チュウさんはおそらく統合失調症だと思いますが、不安そうな表情、恐怖にパニックになる様子を、繊細に演じておられて見事でした。

 

病棟にいる患者様は、弱さもありずるさもあり、病んだもの同士衝突もあり・・・

でもみんなが一生懸命にその閉鎖された空間で生きている、閉鎖された空間から出るのを望む気持ちと怖がる気持ちがある、というのは仕事をしていて常々感じるところです。

そんな精神科閉鎖病棟の様子がこの映画で少し触れられるかもしれません。

 

一つ残念だったのは重宗です。

映画の重宗は乱暴者で周囲に煙たがられている存在。

若い由紀に目をつけて、暴力で抑えつけて強姦をするという鬼畜な役です。

重宗は「薬物依存症」として出演していますが、うーん、薬物依存症患者へのイメージはやはりこういうイメージか・・・と少し残念な気分。

 

 

おわりに

病棟内で個人情報がだだ漏れだったり、閉鎖病棟なのに結構自由に外出できてたり、つっこみ所はありましたが(笑)

とっても深みのある面白い映画でした。

 

任意入院だったのに退院をしなかったチュウさんが退院し、裁判が終わった秀丸に「俺退院したんだよ!!チュウさんだよ!退院したよ!」と叫ぶシーンは感動的でした。

 

病状的には退院できるのに、勇気が出ず入院を継続していたり、居場所がなくて仕方がなく病院にいたり、家族が入院継続を望んだり・・・

社会的入院がなかなかなくならない精神科医療。

病棟は守られている安全な空間ですし、そこに喜びもありますが、それでも、外に出ること、自分の足で歩き始めること、私たちが援助するのはそこの部分なんだな、と改めて思うことができました。

 

興味がある方はぜひ見てみて下さい。