「ねことじいちゃん」
映画「ねことじいちゃん」は、小さな島の住人の日常を描いたとてもほのぼのとした作品です。
監督は世界中のねこを撮り続けている動物写真家の岩合光昭さんです。
もちろん映画にはたくさんのねこ達が出演し(エンドロールにも名前が!)、可愛いねこと島の綺麗な景色の映像美も見どころな映画となっています。
ねことじいちゃん あらすじ
2年前に奥様に先立たれたご老人、「大吉」
大吉は飼い猫の「タマ」と二人で暮らしています。
大吉はタマとの散歩や毎日の食事作りを日課にしながら、小さな島に住む住人達と穏やかな日々を送っています。
ほとんど昔から知っているもの同士、小さな小さなコミュニティですが、新しいカフェができたり、公民館でディスコをしたり、普通の日常の中に楽しみや幸せを感じる日々・・・
しかし友人の死や自身の身体の不調を経験し、息子たちと同居、など、今までとは違う生活の可能性を見ることになります。
そんな中タマが突然いなくなり・・・
自分やタマが今後心豊かに幸せに暮らしていくためには、どう生きていけば良いのか。
本当の幸せとは穏やかなものだという大切なことに気づける映画です。
ねことじいちゃんから学ぶ心の傷の癒し方
私は心理屋なので、ついつい何でも心理学と交えて考えてしまうのですが、ねことじいちゃんは「心の傷の癒し方」が学べる映画だと思います。
心の傷を癒す時、人はペットを飼ったり旅行に行ったり飲みに行ったりしがちです。
「非日常」を体験し、今の辛い感情を見ないように気づかないように、まるで忘れてしまったかのようにしたくなります。
もちろんそれは悪いことではありませんが、非日常では気持ちの発散はできても心の傷を癒すことはできません。
心の傷を癒すのは、ただ一つ「普通の日常を送る」ことだけです。
普通の日常とは、朝に起きて夜に寝る、3食食事をする、会う人に挨拶をし回覧板をまわし部屋を換気する。
野菜が足りていなければサラダを食べて、身体が冷えていればショウガ湯を飲みお風呂につかる。
そういう毎日が普通の日常です。
もちろん学校や仕事などのルーティンも適度にこなします。
この普通の日常を過ごすことこそ、心の傷を癒すのです。
ねことじいちゃんはまさにこの「普通の日常」の中で、人の死や自分の老いと直面し、また「普通の日常」の中でそれらを消化し心に落として納得していく、という過程が描かれています。
映画の主人公である大吉(もしかしたらタマが主人公なのかもしれませんが・・・)は、妻に先立たれたことの傷を、妻がよく作ってくれていた料理を丁寧に作り、タマと一緒に散歩をし、昼寝をする、そんな日常の中で穏やかに心に落としていっているようでした。
旅行をして美味しい食事を食べ、素晴らしい景色に出会う、それも素敵なことですし人生を豊かにしてくれますが、自分で作った食事を自分の家で食べ、自分の住む町の朝焼けや夕焼け、桜の花や星空を眺めることは、その地区に根差した生き方ができ、とても人間らしい生き方です。
まさに「心の傷を日々の生活の中で癒す」とはこのことだなあ・・・と深く感じる映画でありました。
映画ねことじいちゃん ★★★★★
個人的な感想ですが、私はとてもこの映画おもしろかったです。
上に書いたような心の傷に関連する部分もそうですが、それなしで考えてもおもしろかったです。
クスっと笑える描写が多いですし、出てくる食事も本当に美味しそう!
そしてもちろん、猫が素晴らしいんです。
動物写真家の岩合監督の作品だな、という感じです。
ただ単純に「可愛い!」というだけではなく(いや、可愛いことは間違いないんですが・・・)、猫の一つ一つの表情が良いんです。
自然な猫の表情と島の景色とともに移り変わる美しい自然が涙が出るほどきれいでした。
大きく盛り上がるのではなく、最初から最後まで高い満足度のまま終わる映画、という印象でした。
気になった方ぜひDVDで見てみ下さいね。