旅ごころブログ🐒

心理カウンセラーをしている筆者が心理学の知識を紹介するブログです。趣味の旅行で行ったおすすめスポットや飲食店の紹介もしていきます。

アルコールのない人生を生きるために-アルコール依存性の心理-

スポンサーリンク

アルコール依存症は脳の病気だということは、少しずつ浸透してきていますが、アルコール依存症者の心理を理解しておくことも重要なことです。

 

そしてアルコール依存性の治療でとても大切な「アルコールのない人生の楽しみ方」を考えることも不可欠です。

 

 

今日はアルコール依存性者が回復するために、アルコール依存性の心理を正しく理解し、アルコールのない人生を考えていきます。

 

 

 

アルコール依存症者の「否認」

アルコール依存症「否認の病気」とも言われています。

「否認の病気」とはつまり、自分の病気に気づき、特徴を知り、病気を受けれ、

自分自身で治療を選択する、ということが非常に困難であることを指します。

 

 

 

この「否認」を克服することが、回復への第一歩となりますが、「否認」の克服とはつまり、「病識を持つ」ということです。

 

 

病識とは、自分が病気であることを認識し、認めることです。

この病識を持つことがアルコール依存症の方はとても難しいのです。

 

 

 

ちなみに、アルコール依存症以外の方でも、精神障害の方は病識を持つことが困難な方が多いです。

病識については以下の記事をご参照ください。

 

www.ntan.work

 

 

さて、では話を戻します。

アルコール依存症の方が病識を持つことが難しい、自分が病気であることを否認してしまうのはどうしてでしょうか。

 

 

はっきりとお伝えすると「お酒を飲みたい」からです。

 

 

アルコール依存症の治療の基本は断酒です。

節酒という方法も最近では適用されつつありますが、断酒にしても節酒にしても、自分がアルコール依存症であることを認めると、お酒が飲めなくなる、または制限しなくてはいけなくなるので、認めてしまうのが「怖い」のです。

 

 

 

認めるのが「怖い」と書きましたが、アルコール依存症の方にとって、お酒をやめることはとても怖いことです。

 

 

「治療しないとどうしようもない。次飲んだら死ぬかもしれない。やめないといけない。でもどうしてもお酒を一生飲めない、ということを受け入れられない自分もいる」

 

 

「娘の結婚式に1杯飲むのも許されないのか・・・」

 

 

「10年やめても1杯飲むと再発する、一生やめる、という考えがどうしても受け入れられない。みんな普通に飲んでいるお酒じゃないか」

 

 

 

怒りながら、涙を流しながら、放心しながら、こんなことを話されていた方をたくさん見てきました。

 

 

お酒をやめる、依存症ではない私たちからすると、それほどまでに人生を狂わせる出来事だとは思えないのですが、彼らからするとお酒を止めるのは大事件なんですね。

 

 

だから否認します。

分かってはいるけど、認めるとお酒なしでどう生きていけば良いのか分からないので、認めるのが怖いのです。

 

 

 

 

お酒なしの人生

みなさんはお酒なしの人生は想像できますか??

 

 

別に平気・・・

少し味気ない

自分には無理かも

 

 

色々な意見があると思います。

 

 

ではこの「お酒」をみなさんが大好きで大好きで一番大切なものに置き換えてみて下さい。

 

 

彼なしの人生

10年間以上おっかけをしているグループなしの人生

大好きなスポーツ

 

 

確かにそれがなくても「生きていく」ことはできます。

しかしそれら自分が好きなものを断つというのは、本当に悲しいことですよね。

 

 

依存症はさらに「脳の病気」なので、心理的な辛さ+依存が入ります。

 

 

彼らは今後「酒なしの人生」をどう生きていくのかを模索していきます。

それはとても苦しい作業なのです。

 

 

 

お酒なしの人生は味気ない?

アルコール依存症になると、アルコール以外のものへの興味が極端に低くなります。

 

 

今まで好きだったこと、好きだった人、好きだった食べ物、それらがアルコールほどには心躍るものではなくなってしまうのです。

 

 

もちろんこれもアルコール依存症「症状」です。

 

 

だからアルコール依存症の人たちは、断酒に成功していても、常に「空虚感」を抱いています。

 

 

私たちが日常で「あー、今日は○○があるから嬉しい」「明日カレーにしよ!」「来月は旅行だー!」と、すっごく嬉しくなるような出来事が、それほどまでには強く喜びを感じられなくなります。

 

 

味気ない。

 

 

そう感じてしまうのです。

 

 

 

アルコールなしの人生を生きていくために

これまで書いたことは、全てアルコール依存症の当事者の方や、そのご家族の方へ勉強会などで伝えていきます。

 

 

今までの話だと

アルコール依存症は断酒が第一選択肢

・だからこそアルコール依存症の人は自分がアルコール依存症ではないと否認する

・アルコール以外のものへの興味が低くなる

 

ということでした。

 

 

ではアルコール依存症の当事者の方やそのご家族は、どうやって生きているのでしょうか。

本当に何も感じずに空虚な人生を送るしか道はないのでしょうか。

 

 

もちろんそんなことはありません。

 

 

家族の協力のもと断酒を継続し、健康的な生活と穏やかな心を取り戻している方はたくさんおられます。

 

断酒をしつつ、他の人の断酒にも協力することに生きがいを見出している方もいます。

 

断酒会やMACなどの普及活動に協力したり、講演をする人もいます。

 

 

このように穏やかな日常を取り戻すには時間がかかります。

そのために私がおすすめしているのは、とにかくまず「お酒以外の楽しみ」「たくさん」見つけることです。

 

 

アルコール依存症の人が一番好きなのはお酒です。

 

その他のものでそれを埋めようとするならば、数を多くするしかありません。

 

2個や3個ではなく、5個、6個、7個・・・と、とにかく楽しいことをたくさん見つけてみて下さい。

 

 

これはアルコールの勉強会などでは必ず話題となることです。

 

 

以下に例をあげてみます。

 

・カラオケ

・読書

・漫画を読む

・ゲームをする

・スポーツをする

・旅行へ行く

・マッサージを受ける

・料理を作る

・紅茶やコーヒーなどのアルコール以外の嗜好品を楽しむ

・家庭菜園

・音楽を聴く

・楽器を習う

・友人と美味しいケーキを食べる

・小銭貯金をする

・映画を見る

・お菓子を手作りしてみる

・ジムに行き筋トレをする

・簡単なものでも良いので資格にチャレンジする

・ヨガをする

・雑誌を読む

・ボランティアをする

 

今で21個です。

他にもまだまだあります。

 

・プールへ行く

・海を見る

・温泉に入る

岩盤浴をする

・ドライブをする

・山登りをする

・全国のスイーツを毎月取り寄せてみる

・パソコンを学ぶ

お笑い番組を見る

 

 

 

この中で少しでも「興味がある」「これならやってみても良いかな」「楽しそう」と思ったものはありますか??

もしあればどんどんチャレンジしてみて下さい。

楽しければ続けて、楽しくなければやめて他のものを探せば良いのです。

 

 

もちろん他のものでも構いません。

身近な人に聞いてみても良いと思います。

 

 

 

アルコール依存症の人が実際に行っていた人生を楽しむ方法

さて、では実際にアルコール依存症の人が行っていた趣味を楽しむ生活例を紹介していきます(数個の事例を組み合わせたものです)

 

 

Aさん(30代 男性)

・奥様と2人暮らし

・奥様の作った料理と一緒にお酒を飲むことがストレス発散になっていた

アルコール依存症と診断され断酒を決意

・仕事は定時で帰れるように調整

・週に1回の自助グループと、2週間に1回の診察・カウンセリングでフォロー

 

 

アルコール依存症で入院するまでのAさんは、特に好きな趣味もなく、ゲームをしたり漫画を読んだりするくらいでした。

それも熱中するほどではありませんでした。

 

 

唯一、料理上手な奥様の手料理とお酒を仕事から帰って楽しむことが、癒しとなっていました。

 

 

断酒は決意したものの、今まで楽しみだった食事とお酒がなくなると思うと落ち込む気持ちもある・・・と語っておられました。

 

 

もちろん奥様は料理は変わらず作っておられたのですが、そこにお酒がないとなんだか寂しい…と感じていたわけですね。

 

 

そんな中Aさんはカウンセリングの中で、アルコール依存性の特徴を学ばれ、趣味を持つことの重要性も感じられました。

奥様もアルコール依存性の家族会に参加をされ、同じくアルコール以外での楽しみを持つことに協力をしたい、と考えられたようです。

 

 

そこで以下のような取り組みをされました。

 

・お茶の種類を増やして料理によってお茶を変えてみた。

 

・週末の休みの一日は、二人でランニングや散歩、スポーツセンターでの運動を行い、その後にビールを飲みたくならないように、冷たいジュースを飲むようにした

 

・小銭貯金をはじめて貯まったら旅行に行く楽しみを持った

 

・料理以外にお菓子作りをはじめて、二人でお菓子を作り、美味しい紅茶やコーヒーを楽しんだ

 

・断酒会の講演などを二人で聞きに行き、断酒のモチベーションを保った

 

 

私はこのような報告をAさんから聞いて、素直に「すっごく楽しそう!」と思いました。

 

実際にAさんの感想を聞いてみると、運動はダイエットやストレス発散にもなるし、お菓子作りなどの新しい趣味もできたこと、今までお茶やコーヒーがこんなに美味しいものだったなんて知らなかったこと、一人で通う自助グループもとても役に立つが、奥様とアルコールの勉強を一緒にすることもモチベーションになっていることなど、嬉しそうに話して下さいました。

 

 

もう一つケースを紹介しましょう。

 

Bさん(50代女性)

・旦那様と二人暮らし

・今まで何度も断酒を試みるも失敗し落ち込んでいた

・既婚の娘さんが近くに住んでいる

・月に2回の診察とカウンセリングを行い、自助グループには参加せず、年に数回断酒関連の講演や学会などに旦那様と見学に行っている

 

 

Bさんはお酒が大好きで身体も強く、社交的な方でした。

趣味のサークルで知り合った友人がたくさんおり、飲み友達と飲み会をすることが楽しみでした。

旦那様や娘さんとの関係も良好でした。

 

 

しかしアルコール依存性になり、何度も断酒に失敗するうちに、自信をなくしてしまいなげやりになっていました。

 

 

Bさんの場合、落ち込みもひどかったので、娘さんや旦那様にもカウンセリングに参加していただき、家族が協力してBさんを応援できる環境をみんなで考えていきました。

 

 

そんな中、Bさん一家が取り組んだのは以下のようなことです。

 

自助グループへ見学に行き、お酒をやめるための仲間を作る

 

・旦那様と一緒に昼間に公民館などでやっているストレッチ教室やヨガ教室などに参加し、社会との繋がりを持ちつつ運動習慣をつける

 

・週に1度娘さんが遊びに来た時には一緒に食事を作り、新しいレシピにも挑戦する

 

・夜に外に出ると飲みに行きたくなってしまうので、昼の間に趣味でもあるカラオケに行く。その時には抗酒剤を飲み、一緒に行く友人にも断酒をしていることを説明しておく

 

・もともとお笑いライブが好きだったのでよく行っていたが、昂揚感で飲みたくなってしまうので、お笑いDVDを家族で見る

 

・冷蔵庫にはBさんが好きなチョコレートとぶどうジュースを常に入れておく

 

 

これらの取り組みは、何度も話し合い、試しては失敗し、最終的にはBさん自身が自分で合いそうなものを選んだものです。

 

 

少しずつBさんは社交的なBさんに戻っていき、飲酒欲求が強くなりそうな場面ではあらかじめ抗酒剤を飲んだり、友人や家族に協力をお願いするなど、周囲の人たちを頼ることもできるようになってきました。

 

 

 

そして「また飲んでしまうのでは」という不安もありつつ、工夫の仕方が分かってくるたびに、少しずつ自信もついてきたようです。

 

 

 

おわりに

アルコール依存症の人はアルコールがない人生に最初はとまどいます。

しかし、その中でも希望を見つけることはできるのだな、と実際に体験者の方に話を聞くと感じることができます。

 

 

断酒や節酒をしながら人生を楽しむ、この視点は依存症治療においてとても大切な考え方なのだと思います。