旅ごころブログ🐒

心理カウンセラーをしている筆者が心理学の知識を紹介するブログです。趣味の旅行で行ったおすすめスポットや飲食店の紹介もしていきます。

これで薬物依存症の原因が分かる!ラットパーク実験知っていますか?薬物と孤独の関係を証明した有名な実験を紹介!

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薬物依存症は「普通に生活をしていればなることはない」、「なんだか遠い病気」というイメージでしたが、今では薬物を使用し逮捕されるニュースはあまり珍しくなくなりました。

 

薬物依存症になるためには、もちろん薬物の使用をするのかどうかで決まるのですが、どうして薬物依存症になるのか、今日はその部分を深めていきたいと思います。

 

 

 

薬物依存症の原因を探るための実験「ラットパーク実験」

薬物依存性の原因を探るために、様々な実験が行われ検証されてきました。

 

今日はその中から「ラットパーク実験」について紹介していきます。

 

麻薬などの薬物には、知られている通り依存性があり、一度使用してしまうと自分の意思だけでやめていくことが非常に難しいと言われています。

これは薬物が脳の報酬系作用するドーパミン経路に影響を及ぼすためです。

 

つまり!

薬物は、私たちの頭の中にある「気持ちが良い!」と感じる部分に強い影響を与えます。

そして一度その快感を経験すると、我慢しようにもどうしようもなくなり、依存してしまう、ということです。

 

これは薬物に限らず、依存症になると、依存物質以外のものの価値が、その人の中で非常に低くなるんです。

 

今までやっていた趣味や好きだった人、食べ物などがどうでも良くなり、依存物質のことしか考えられなくなります。

依存物質中心に生活がまわるようになるんです。

 

特に薬物は脳に影響を大きく与えるので、中毒になると自分の意思でどうこうできるものではありません。

 

しかし覚醒剤を1度だけ使用して依存性になる確率は15パーセントだと言われています。

そのため、使用する人の体質や薬物の依存性によって薬物依存症になるのかどうかが分かれる、と言われてきました。

 

しかしこの定説に「まった!」をかける心理学者がいました。

 

1980年代に心理学者のブルースK・アレクサンダーは、19世紀のイギリスでは、医療用のアヘンが、ただの下痢や咳などにも処方され汎用されていたにもかかわらず、依存性になる者は少なかったことから、依存性の原因は薬物自体の依存性にあるのではなく、孤独やストレスなど周囲の環境にあり、その苦痛を和らげるために薬物を使用するのではないか、という仮説を立てたのです。

 

今までの

薬物依存症=その人の体質+薬物の依存性

という定説を疑い、

薬物依存症の原因は環境要因にあるのではないか、というその当時では非常に斬新な説を出したのです。

 

そこでラットパーク実験を行いました。

 

 

ラットパーク実験 概要

準備したものは2つのラット用のゲージです。

1つは小さなゲージ、もう1つはそれより200倍の広さのゲージでした。

 

小さなゲージにはネズミを1匹

大きなゲージにはネズミを15匹と、十分な食料、水、遊具

を準備しました。

 

この大きなゲージは食料があり、運動ができ、仲間がいる、「ネズミの楽園」を作ったわけです。これがラットパークですね。

 

それぞれのゲージに、「普通の水」モルヒネ入りの水」を用意し、モルヒネ入りの水は苦いため、砂糖を入れて甘くしました。

 

さて、どうなったでしょうか??

 

 

ラットパーク実験 結果

小さなゲージに入った1匹のネズミ:モルヒネ入りの水を好んで飲むようになる。そのモルヒネ入りの水に入れる砂糖を少なくし、味を苦くしても、それでもモルヒネ入りの水を飲み、モルヒネ入りの水に強い依存性を示しました。

 

ラットパークのネズミたち:モルヒネ入りの水をどんなに甘くしても、モルヒネ入りの水を飲むことはなく、普通の水を飲み依存性を示しませんでした。

 

また、小さななゲージに入ったネズミを、ラットパークの中に入れると、モルヒネ入りの水をだんだんと飲まなくなり、最後は普通の水を飲み飲むようになったのです。

 

この実験は、薬物依存性の原因は、薬物の依存性ではなく、環境にあるということを示唆する実験として有名なものです。

 

 

 

薬物依存になったネズミは孤独だったのではないか?

もともとラットでの薬物実験では、ネズミを1匹ゲージに入れ、普通の水とモルヒネ入りの水、どちらを飲むようになるのか、という方法で行われていました。

 

その実験で、ネズミがモルヒネ入りの水を好んで飲んだため、「薬物には依存性がある」「この依存性のせいで薬物依存症になる」と結論づけられていたのです。

 

ここに異を示したのが前述の心理学者のブルースK・アレクサンダーだったんですね!

彼は

「なぜネズミ一匹なんだ?」

「孤独だったのではないか?」

と実験の穴を指摘し、ラットパーク実験を行うに至ったわけです。

 

そしてその実験で、薬物依存症になるのは、薬物の依存性やその人の体質だけが原因ではなく、その人の環境が大きく影響する、孤独やストレスが強い環境にいると、薬物に依存しやすくなる、ということが証明されました。

 

今では、依存症治療者の中で、薬物はもちろん、依存症全般で「孤独は危険」という認識は当たり前となっています。

 

そのため、依存症治療は個別の診察やカウンセリングだけでは不十分で、集団での依存症教育勉強会、自助グループなどのミーティング、家族へ依存症の知識をお伝えする依存症家族会、などがとても重要になっています。

 

 

 

理解が得られにくい薬物依存症

依存症自体理解の得られにくい疾患ですが、薬物依存症は法に背くので、どうしても「犯罪者」という認識が強く、偏見も多いため支援を受けにくい状況にあります。

 

しかし司法での介入後、社会復帰するためには医療・福祉の介入が必須です。

 

医療や福祉関係者でも薬物依存症、覚せい剤依存症の人への苦手意識を持つことは多いです。

 

「怖い」「犯罪を犯した」「どう接して良いのか分からない」

という気持ちがわくのでしょう。

 

その感情自体はまったく否定はしませんが、薬物依存症はこれまでの説明通り、「孤独な環境」「ストレスの多い環境」にいる人が、たまたま薬物を使用することでなる病気です。

 

「孤独な環境」

「ストレスの多い環境」

これは今の時代まったく珍しい環境ではありません。

 

そんな環境を生きている中で、「楽になる薬」と言われて差し出された、売人がとても親切にしてくれた、そのようなことがきっかけ初めて薬物を使用した人は多いのです。

 

 

おわりに

薬物依存症者が立ち直るには、孤立を防いで仲間や支援者とともに治療を継続していくことが大切になってきます。

 

私はブルースK・アレクサンダーの「あのネズミは孤独だったのではないか?」という言葉がとても印象深く残っています。

 

人間とネズミはまた違いますが、それでも「孤独」という環境は生物にとって耐えがたいものなのでしょう。

 

世の中の偏見をなくしていくことも、薬物依存症を防止していくことにつながるのかもしれません。