近年DV(ドメスティックバイオレンス)が世間に知られてきて、ドラマや映画などでもDVを題材にしているものが増えていますよね。
DVとは明確に定義されているわけではないのですが、一般的には配偶者、恋人、家族など身近な者から暴力を受けることを指します。
この場合、暴力を受ける側を「女性」とは定義していませんので、男性でも女性でも暴力を受ければ、DVの被害者ということになります。
保健所などの無料相談では、配偶者からの暴力相談や、精神的な病気を抱える家族(依存症や引きこもり、鬱など)からの暴力を受けている、という相談がとても多いです。
同じDVの相談でも相談者の方の状況によって、解決方法は異なります(加害者が配偶者なのか同居しているのか、どの種類の暴力なのか、加害者に精神障害はあるのか、緊急度はどの程度なのか、など)
そのため、今DVを受けている方は、精神保健福祉センター、配偶者暴力相談支援センター、DV法律相談、などに相談をされるのが一番役に立つと思います。
(※もちろん緊急時は警察110番へ!)
今日の記事は以下のような人へおすすめの記事です。
・この程度で暴力と呼べるのか?と相談をためらっている人
・自分は男で相手は女・・・たとえ殴られても相談までするのは・・・
・相談はすでにしているけど、一緒に暮らす上で対応方法をさらに勉強したい
・自分は暴力を受けている被害者ではないけど、知識として知っておきたい
・暴力をやめたいけどやめられない人
この記事を読めばDV相談に行かなくても大丈夫、という記事ではありません。
DVの問題はストレス対処法などある程度一般化できるものとは違い、特に緊急度の見極めや具体的な非難の方法など、個別性が高いため、記事を読んだだけでは不十分ですのでご注意下さい。
暴力とはいったいどのようなことを指すのか
次の設定のうち「暴力」に当てはまるものはどれでしょうか。
考えてみて下さい。
①夫が酔っ払い醜態をさらした。妻がそのことを問い詰めると、夫は妻を突き飛ばして部屋を出ていった
②娘が最近スマホにはまり、深夜まで友人と電話やラインをしている。「最近携帯の時間が長すぎるんじゃない?」と母親が娘に声をかけると、娘は「いつもうるさい!」と大声をあげてテレビのリモコンを壁に投げつけた。
③夫婦で口論となっている時に子どもが部屋に入ってきた。夫婦は子どもに「入ってくるなと言っただろ!出ていけ!」と怒鳴った。
いかがでしょうか。
これらはすべて暴力にあたります。
暴力とは殴ったりたたいたりする「身体的な暴力」だけが暴力ではありません。
暴力的な言葉で脅したり、物を破壊したり、怒りを激しくぶつけてくることも暴力に入ります。
DVの話をしたり、暴力のワークを受講すると、多くの人が今まで気づかなかったけど、暴力を受けていたことに気づいたりします。
激しく殴られたりけがをしないと、相手も自分も暴力だと気づかず、問題が隠されてしまうのが、暴力の怖いところです。
まずは暴力とは、身体的な暴力だけではない、ということを認識してください。
暴力は誰の責任で起こるのか?
よく暴力を行うほうは「怒らせたお前が悪い」というような言葉を使います。
また暴力被害を受けた被害者が、「自分にも非があったのではないか」と語ることもしばしばあります。
しかしそれは絶対に違います。
暴力は暴力行為をする本人の問題です。被害を受けるほうに非はありません。
・暴力とは、自分の気に入らないことがあった時に、相手を支配・コントロールするために用いられる間違った力の行使
・その人は、苛立ちと怒りを抱え、自分の感情や行動をコントロールできない状態になっている
・暴力は100パーセント自分のことしか考えていない
暴力行為を相手へのしつけのように話す人もいます。
「お前のためにやっている」
「愛情があるから叱る」
しかしこれも間違いです。
暴力は暴力をふるう側の問題であることは間違いありません。
大切なことなので何度も言いますが、もし仮に相手を傷つけることを伝えてしまい、相手を怒らせたとしても、暴力をふるうのは間違ったことです。
暴力は自分のイライラを相手に投げつける、という意味もありますが、「相手をコントロールする」というのも大きな理由です。
暴力の恐怖で相手を服従させ自分の良いようにコントロールするのです。
もしも身近な人に暴力を受ける関係の場合、あなたに責任はありませんが、「暴力を受けない」ための対策を立てることはできます。
自分の身を守る方法を考えるのです。
暴力から身を守る安全対策
まずは万一のそなえをしておきましょう。
①避難用カバンと逃げ場所の確保
いざという時にすみやかに避難できるように日ごろから準備をしておきましょう。
お金、免許証、保険証などは財布に入っていますか?
通帳などの貴重品もできれば一つのカバンにまとめておきましょう。
自分と、子どももいる場合は最低限の身の回りのものも準備しておきます。
下着、着替え、けがをした時用の応急処置セット、これらをコンパクトにまとめて目立たない場所に隠しておくと良いでしょう。
また信頼できる友人や家族に、事情を話しておき、いざという時には避難をさせてもらえるように頼んでおきます。
実家に頼れる場合は、2~3泊できる荷物と少しのお金を預けておくと良いですね。
もちろん、避難場所はホテルでも構いません。
近隣のどの場所にホテルがあるのかをあらかじめ調べておくことも大切です。
DV被害者の避難場所を使う、というのもとても良い方法です。
②DVについての相談場所
地域でDVについての相談に乘ってくれるところを調べておきましょう。
避難するほど大きなことになる前に相談をしておくのがベストです。
女性センターや精神保健福祉センター、民間の相談機関、女性や母子のためのシェルターなどがあります。
③110番
もしも激しく暴力をふるわれたり、逃げられない状態になれば、110番に迷わず連絡をしましょう。
トイレなどに逃げ込みすぐに電話をします。
勇気がいりますが躊躇はせずに自分の身を守りましょう。
暴力に先行するサインを見極めよう
暴力は突然現れる場合もありますが、多くの場合暴力に先行するサインがあります。
その危険信号を見極めることも重要です。
暴力へのサインは「うるさいなあ・・・」「いい加減にしろ」などの強い言葉であることもありますが、言葉だけとは限りません。
例えば「こぶしをにぎる」「落ち着きがなくなる」「物理的な距離が近くなる」「声が大きくなる」など、動作や態度に現れる場合もあります。
ここでもう一度協調をしておきます。
暴力の責任は100%暴力を行う側にあります。
しかし実際に暴力の危険が目の前にあるときに大切なのは、物事の筋を通すことではなく、暴力を受けないことです。
暴力に先行するサインに気づき、退避の行動を取ることで自分を守ることができる場合もあります。
・相手が酔っぱらっている場合、正論は通じません。話し合いなどは避けておくほうが良いです
・暴力に繋がるサインに気づいたら、おだやかにその場を立ち去る(捨て台詞などはだめです)か、話題を打ち切る
・暴力が出てしまえば、すぐにその場から逃げる。できれば家を出るほうが良いです
暴力が日常化している場合
このような場合は一緒に過ごすこと自体が非常に危険です。
家族、友人、職場の上司、保健センター、警察など、相談できる相手にすぐに相談し、避難をして下さい。
DVは身近な人から受ける暴力です。
夫婦、親子などであればすぐに関係を切ることは難しいかもしれません。
しかしまずは自分や子どもの身の安全が第一です。
未成年が被害に遭っている場合は、まずは教師や親せきに相談をするのが良いでしょう。
暴力が日常化してる人と、関係を改善できるのかは分かりませんが、なんにせよ一度距離を取ること、第三者に入ってもらうことは不可欠です。
暴力を行う側の支援
自身の暴力を自覚しており、何とか暴力の問題を解決したい、と思っている人もいます。
このような場合は、一人、または家族だけで抱えず相談機関に相談することをおすすめします。
暴力的な行動を改めるには大変な道のりがあります。
決して家族だけで抱えられる問題ではありません。
暴力をふるう側は助けを求めにくいかもしれませんが、変わりたいという意思があるのであれば、一緒に方法を考える相談者を見つけましょう。
暴力を行う側が、昔虐待などで自分も暴力を受けていた、という場合もあります。
そのような場合は、健康的な対人関係を築く方法が分からない、というケースもあります。
そのような場合は、コミュニケーションの練習を行う、という方法もあります。
また怒りのコントロールが上手くいかない結果、暴力を行う場合もあります。
怒りのコントロールは適切な服薬である程度コントロールしながら、アンガーマネジメントなどで、怒りをコントロールする方法を勉強し、練習します。
ストレスがたまりすぎた結果、周囲に暴力的になる場合は、適切にストレスを解消する方法をストレスマネジメントなどで学んでいきます。
「女は殴ってしつける」「あの人が悪いから暴言を吐く」などの考え方から暴力行動が出ている場合は、認知行動療法などで考え方を柔軟にしていきます。
このように、暴力を行ってしまうがわが、自分の行動に問題意識がある場合は、治療を受けることも可能です。
おわりに
暴力の問題は隠ぺいされがちです。
暴力を受けている、と気づかない場合もありますし、暴力を受けた恐怖から助けを求められなくなっている場合もあります。
暴力を行う方も、自分で問題だと気づいていたとしても、自身の行為を隠しがちです。
まずは相談から、勇気がいることですが、勇気を出して自分や大切な人の生活を守りましょう。
暴力で苦しむ人が一人でも多く相談機関に繋がり、安全を取り戻せることを祈っています。