アルコール依存症や薬物依存症、ギャンブル依存症などの患者さんが「なぜやめないといけないのか」という疑問を抱くことは少なくありません。
・身体に悪い
・家族に迷惑がかかる
・違法だから
・借金を背負うから
など理由はたくさん出てくると思いますが、そもそもそのようなことは「分かっていて」依存していることはほとんどです。
今日は「なぜやめないといけないのか」について考えていきます。
依存症はコントロールの病
依存症はコントロールの病です。
よく依存症の方が「自分はまだコントロールできているから依存症ではない」とおっしゃられます。
しかし今はコントロールできていても、今後も依存行動を続けていれば、必ずコントロールができなくなります。
なぜなら依存症は「脳の病気」だからです。
・アルコールや薬物の量が、最初の頃より増えている
・最初は1万円勝ったら大喜びしていたのに、だんだん物足りなくなってきている
・依存対象以外のことへ興味が薄れてきている
・アルコールを飲むと性格が変わると言われる
・依存対象にお金を使い、生活費に困ることがある
違法薬物は別として、お酒やギャンブルは依存症でない方でも使用することはあります。
しかしお酒を飲んだことで、ギャンブルをしたことで、生活に支障が出ることはありません。
せいぜい二日酔いで休日がつぶれた、とか、お小遣いでパチンコをしたら遊ぶお金がなくなった、という程度です。
お酒を飲むために嘘をついたり、ギャンブルにかけるお金がどんどん増えたりした場合は、コントロールする力が弱くなってきているということです。
何かに依存することで出る影響とは?
では、今日の本題である「なぜやめないといけないのか」について書いていきます。
それは「悪い影響が大きい」からです。
アルコールや薬物、ギャンブルに依存して起こる悪い影響は以下の通りです。
気持ちが不安定になる
何かに依存する背景として、「ストレス発散」「寂しさを紛らわすため」などのがある場合は多いです。
いわゆる「自己治療的」に依存対象を使用していた、という場合です。
ストレスがかかりイライラして、絶望して、お酒を飲んで気をまぎらわしてきた、という方はたくさんおられます。
しかし、そのように自己治療的に依存対象を用いても、本当の意味で寂しさやストレスは解消されません。
依存症の方で依存物質を今も使用していて「精神的に安定している」人はいません。
依存対象に没頭して、苦しいことをひと時忘れることはできますが、身体的・精神的・経済的にはどんどん不安定になっていきます。
衝動のコントロールが効かなくなる
薬物やアルコールを使用すると、感情のコントロールが効かなくなります。
何か嫌なことがあった時、普段なら我慢したり、人に相談したり、発散をしたりするなど、適切に対処できるのに、薬物やアルコールを使用している時は、自分や他人を傷つける対処をしてしまいやすくなります。
自分を傷つける対処をした場合、アルコールは痛みをにぶらせるので、自傷行為なども深刻な傷になってしまうことも少なくありません。
犯罪を起こしやすくなる
依存物質に依存している場合、傷害事件などの犯罪を起こす可能性が数十倍も高いと言われています。
自分だけではなく他人を傷つける事件を起こしやすくなってしまうんですね。
睡眠の問題が出やすくなる
依存症は脳の病気です。
依存物質を取ることで、睡眠の問題は必ずといって良いほど起こります。
寝れない、起きられない、睡眠の質が落ちる・・・
普段睡眠に問題がない方はなかなか想像がしにくいと思いますが、睡眠障害は非常に苦しいです。
睡眠に問題が起こることで、日中のパフォーマンスは確実に落ちますし、気分も不安定になります。
免疫力が落ちるので病気にかかりやすくなりますし、頭痛などの不定愁訴も増えます。
ちなみに、アルコールを飲むとよく眠れる、という感覚になる方は多いですが、それはあくまで、「そのように感じる」だけで、良質な睡眠は取れません。
治療薬が効かなくなる
これはアルコールや薬物に関してですが、あらゆる治療薬の効果を弱めてしまいます。
効果が弱まるだけではなく、副作用は強く出るので非常に危険ですね。
先ほどの睡眠の問題に関しても、睡眠薬などを処方される場合がありますが、アルコールと睡眠薬を一緒に飲むことで、治療効果は薄れ、ふらつき、めまいなどの副作用は強く出てしまいます。
同じ量だと満足できなくなる
依存症の場合、アルコール、薬物、ギャンブル、すべてにおいてそうですが、だんだんと摂取する量、費やす時間が増えていきます。
当然お金もその分かかりますし、身体への影響も強く出てきます。
おわりに
いかがでしょうか。
依存症はコントロールを失う病。
自分が大好きだった依存対象を断ち切るのは非常に困難で苦しいです。
しかし、心身ともに健康的な生活を取り戻す道は必ずあります。
依存症治療関連の記事は以下をご参照ください。
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