重大な犯罪を犯した容疑者が「引きこもり状態」だった、という報道を見ます。
引きこもり状態にあった容疑者の部屋には、ゲーム機があった、との内容の報道もありました。
みなさんはこれについてどのように感じられますか?
引きこもり状態にある人、ゲームやアニメが好きな人などが犯罪を起こしやすい、というイメージを、意図的に植え付ける報道なのではないか、という批判も出てきています。
近年では重大な犯罪が起こってしまった後は、毎回のようにこのような議論がなされてきていますし、著名人の事件に対するコメントも、大きく報道されていますよね。
「死にたいなら一人で死ね」
というコメントに対してたくさんの意見が出されていました。
その流れで引きこもりに対する支援を紹介する報道もありました。
そもそも引きこもり状態の実情はどのようなものなのでしょうか。
以下目次の気になるところに飛べます!
引きこもりとは?
引きこもりとは、自宅に引きこもって社会的参加をしない状態が、6か月以上持続している状態で、その第一の原因が精神障害とは考えにくいもの、と定義されています。
社会的参加をしない状態、ということなので、仕事や就学、それらの準備などをしておらず、何らかのコミュニティにも属していない状態が、6か月持続している、という状態のことですね。
ちなみに、引きこもりと一緒に語られやすい「ニート」は、15歳から34歳までの、家事・通学・就業をせずに、職業訓練も受けていない者を指します。
引きこもりは年齢などは関係ありませんが、ニートは15歳から34歳まで、と定義されています。
また、「ニートで引きこもり状態」という状態もある、ということですね。
引きこもりの状態は様々で、近所に外出する、家族とコミュニケーションを取る、などには問題がない人もいれば、自分の部屋からも一切出ない(食事・排泄を含めて)状態の人もいます。
また「精神疾患が第一の原因とは考えにくい」と定義されていますが、引きこもり状態の人の中には、引きこもりの第一の原因ではないにせよ、発達障害、知的障害、精神障害、身体障害を抱えている人も少なくありません。
引きこもり者が家族に、または家族が引きこもり者に暴力をふるっている場合もありますし、家族仲が良好な場合もあります。
そしてよく混同されやすいのが、引きこもりは何らかの疾患名ではなく、状態像である、ということです。
不登校もこれと同じで、「不登校」という病名はなく、状態像を表しているにすぎません。
そのため引きこもっている状態の人が、精神疾患を持っていた場合、精神科では「引きこもり」という診断はつかず、「鬱」「適応障害」「強迫性障害」「発達障害」「統合失調症」など、その人が持っている精神疾患の病名がつきます。
これが引きこもりの定義です。
「引きこもりの実際の生活は?」
これは本当に様々です。
先ほど書いたように、暴力や精神疾患などの深刻な問題がある場合もありますし、家族仲は良好で外出も可能の場合もあります。
また支援機関に繋がっている場合もあれば、家族も繋がっていない場合もあります。
ですが、非常に深刻なケースでは、何十年自室に引きこもっている状態で、家族とも数年顔を合わせていない、という場合もあります。
食事を家族が自室まで運び、排せつはバケツなどにすます、という家庭もあります。
精神疾患を抱えている場合は、本人も家族も精神疾患に支配された生活を送っている家庭もあります。
引きこもりの状態が不登校から始まっているケースもあり、小学生から中年期まで引きこもっているという場合もあります。
もちろん引きこもりの年数が短くても、家庭内暴力にまで発展していたり、引きこもりの年数自体は長くても、家庭内は円満だったりと、引きこもりの年数だけでは分からないこともたくさんあります。
困っていることとしても、その家庭によって様々です。
・子どもが就労をせずに引きこもっている。新しい仕事を探すのに協力したいがどうすれば良いだろうか
・家庭内暴力が激しく耐えられない
・引きこもっている子どもの生活が心配。親が亡きあと、経済的にも人間関係的にもどうなってしまうんだろうか
・引きこもっている家族にどうやら精神疾患があるようだ。医療機関につなげるためにはどうすれば良いだろうか
など、同じ引きこもり状態でも悩みは様々です。
引きこもり状態を改善したい、という思いを持っている家族もいれば、引きこもり状態に関しては受け入れているけど、親亡き後の子どもが心配なので、生活の基盤だけでも作りたい、という家族もいます。
考えてみれば当然のことですよね。
同じ学校に通っていても家庭環境は異なりますし、同じ犬種も性格は異なります。
同じ癌になっても予後は異なりますしね。
引きこもり状態、と一括りにしても、内容も生活も困ったことも、家庭により異なるのは当たり前のことです。
しかし家族が引きこもり状態にあり、相談機関などにまったく繋がっていない場合、その家族は困難な状態にあることは共通していると思います。
困難事例では、子どもが小学生の頃から中年になる今まで引きこもっており、親はすでに高齢で、将来の見通しが立たない、ということもあります。
家族とは仲良く過ごしていても、本人や家族が不安な気持ちで日々を過ごしている、という場合もあります。
どのような状態かは様々ですが、「すごく悩んでいる、困っている」ことは共通しており、家族だけで抱えられる問題ではありません。
「引きこもりの支援はどのようなものがあるか」
最近では引きこもりに対する支援は、世間に浸透しつつあります。
しかし、それでもまだまだ多くの家族が、引きこもりを家族だけで抱えて苦しんでいます。
以下は引きこもりの状態を相談できる場所になります。
・精神科
・保健センター
・区役所・市役所
・引きこもり相談支援センター
この中でも「引きこもり相談支援センター」は、長期間引きこもっている方への支援専門のセンターです。
基本的に相談は無料で、電話相談、来所相談、家族相談、訪問支援などの相談業務の他、適切な機関の紹介も行います。
電話相談は個人的にすごくおすすめです。
当事者だけではなく、家族からの相談も受け付けているので、まずは電話で相談を行い、適切な相談場所を把握したり、そのまま来所の相談に繋がることもできます。
また、「引きこもりの社会復帰」と聞くと、就労や就学のみのように感じられますが、実はそうではません。
何年も引きこもっている状態だと、「浦島太郎」状態になっていることもめずらしくなく、最近の社会の様子が分からず、長期の引きこもりで体力も落ちていることもあります。
そのため、段階を踏んでその方の望む生活を考え、支援していく、というのが基本です。
「少しでも運動がしたい」
ということであれば、なるべく緊張しないで運動ができるコミュニティを探したり、紹介したりすることが必要です。
例えばデイケアや地域活動支援センターなどですね。
「仕事がしたい」
ということであれば、就労支援事業所が力になれます。
「どう生きていけば良いのか分からない」
ということであれば、電話相談やカウンセリングで一緒に考えることもできます。
「仕事をして社会的な地位を得ること」のみを重要視せずに、その方の生きたい道を応援することは基本ですし、家族の不安を少しでも解消することも大切です。
相談をするのを躊躇する理由として、「すぐに仕事を紹介されても自信がない」「うちはたいした問題ではないのに相談をして良いのか」「こんな状態まで相談をしなかったことを責められるのでは」などの不安が挙げられます。
安心してください。
相談をすることは何も恥ずかしいことではありません。
対人間なので「合わない」と感じる相談場所もあるかもしれませんが、引きこもりの相談場所は一つではありません。
抱え込まずに相談をすることで、少しでも悩みを共有できるかもしれません。
「おわりに」
いかがでしたか?
引きこもりの現状を知り、家族で抱え込まない社会を作るのには時間がかかります。
「引きこもり=危険」
「引きこもり=オタク」
などの誤った認識も多く見られます。
正しく理解し、興味関心を周囲が持つことが第一歩だと感じています。