旅ごころブログ🐒

心理カウンセラーをしている筆者が心理学の知識を紹介するブログです。趣味の旅行で行ったおすすめスポットや飲食店の紹介もしていきます。

精神障害を抱える当事者と家族 その実情と支援

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精神障害者や長期の引きこもり者が重大犯罪を起こした時、また家族に精神障害者がいる物が重大犯罪を起こした時、メディアでも大々的に取り上げられます。

 

精神障害者=危険

という構図は最近では少しずつ正しくないものとして浸透しつつあります。

 

最近取り上げられるのは、「家族」の存在です。

 

今回無差別殺傷事件の容疑者は長期の引きこもりだったという情報が流れていますが、確かな情報なのかはまだ分かっていません。

また強迫性障害の妻を殺害した、というニュースも放送されていましたが、全貌は分かっていません。

 

それでもメディアで大々的に報道されることで、精神疾患を持つ方やその家族が、

家族に精神障害者がいて事件を起こしたら・・・

自分も危険だと思われているのか…

また精神障害者の家族を支えていけなくなってきている・・・

そんな不安を抱える家族も少なくありません。

 

今回のブログは、犯罪の是非についてではなく、精神障害を抱える家族を持った時に」どのようなことが起こるのかについて書いていきます。

 

当然ですがどのような理由があれ、犯罪を犯すことは許されることではありません。

と、同時に精神障害を持っているから犯罪を起こす可能性が高い、などというのは誤った情報です。

このことは大前提として、今日はあくまで、「家族」に焦点を当てて書いていきます。

 

 

【他にも方法があったのでは?という残酷な言葉】

今回起こった強迫性障害の妻を殺害する、という悲惨な事件。

被害者の妻は強迫性障害で、家の中では彼女が決めた様々な強迫的なルールを順守する必要があった、とのことでした。

 

このような強迫性障害に支配された生活の中、娘の身を案じた容疑者は、妻を殺害した、と説明しているようです。

 

さて、この事件がニュースで放送されている時に、著名人が以下のようなコメントをしていました。

 

・もっと他に方法があったのではないか

・家族の中でもっと話し合えば、殺害する、という極端なことにならなかったのではないか

 

これを聞いてみなさんはどう思われますか??

 

今回の事件は全容が明らかにされていませんし、強迫性障害であった被害者はすでに亡くなっています。

そのため実際がどんな生活であったのかはまだ分かりません。

 

一般的な強迫性障害の症状は以下のようなものがあります。

 

強迫性障害の強迫には2種類あり、「強迫観念」と「強迫行動」です。

 

強迫観念は、そんなわけはないのに「もしかしたらさっきの交差点で人をはねてしまったかもしれない」、と強く感じたり、綺麗なのに「手が汚れている」、と「手を洗わないといけない」と強くこだわったりすることを指します。

観念の種類は人それぞれ異なり、手が汚れている、自分のせいで大きな事件が起こった気がする、鍵を閉め忘れたかどうかが気になる、などが多いようです。

 

強迫行動は、強迫観念に伴って起こる行動のことです。

「手が汚れている」と強い強迫観念に襲われて、「手を洗う」という行動を起こすわけです。

当然一度手を洗っただけでは納得はできず、5回6回と手を洗います。

その後もどんどんと行動は広がっていきます。

 

生活の厳格なルールを強迫的に定め、それを家族にも守らせようとする、というのは大変よく見られるケースです。

 

・一度外に出たら玄関ですべて服を着替えてからでないと入ってはいけない

 

・飲み物はすべてオレンジ色のものでないといけない

 

・食事を食べる順番が厳格に決められている

 

・部屋を出る時にどちらの足から歩き出し、どちらの足で部屋を出るかが決められている

 

・睡眠時間を厳格に管理している(1分の誤差もなく)

 

などなど・・・

当事者はもちろんこれを厳格に守りますし、家族にも守らせます。

まさに家中が「強迫性障害に支配」されている状態になります。

 

さあ、もう一度先ほどの著名人のコメントを見てみましょう。

 

・もっと他に方法があったのではないか

・家族の中でもっと話し合えば、殺害する、という極端なことにならなかったのではないか

 

みなさんはどう思われますか??

 

以下は私の私見となります。

 

1つ目の意見は「その通り」だと思います。

他に方法はあるのだと思います。

ただ、その他の方法を取れるのか、と言われると答えにつまります。

 

先ほどの例のように、家族の中が病気に支配される、というのは「普通の」生活を送っている私たちには想像もできないほど、エネルギーを使うものです。

 

強迫性障害の症状として、一般的には到底理解できないような厳格なルールを、家族中が順守するように、家族を支配します。

 

強迫性障害の当事者も病気に支配されていますが、家族も支配されるのです。

 

寝る時も心は休まらない、入浴や食事にもルールがあり、しかもそれは治療をしなければ確実にどんどん増えていきます

 

強迫性障害はね、辛いんですよ・・・本当に。

専門家でも、強迫性障害の人を治療していると、その方の切迫感や強い感情に飲み込まれそうになります。

 

病気に支配されている家族や当事者は、言葉もないくらいに、強い疲労、おびえ、不安、恐怖を抱えて生活をしていると思います。

 

それこそ「他の方法を考える」ことができないくらいに。

 

どんなに異常な生活でも、家族にとってはやはり自分が生きる「生活」なんです。

なかなか抜け出せない・・・

 

「他の方法はあった」と思いますが、「それを自分で調べて実行する」ことは非常に難しい、というのが私の意見です。

 

2目の「家族の中で話し合えば」というコメントに関しては、「それは酷ではないか」と感じます。

 

家族で話し合うことは大切です。

ですがそれは病的でない状態の家族が、健康的な話題について話し合うことの場合です。

例えば経済的なことを夫婦で話し合う、子どもの受験について家族会議を開く、祖父母の介護について親戚が集まり話し合う、などですね。

 

ですが、まず精神障害を抱える家族というのは、非常に病的な状態であることが少なくありません。

 

他人から見ると異常と取れるルールを順守している、というのは「正常な状態」ではないんです。

正常な判断ができなくなるほどの苦しみを抱えてる家族なわけです。

 

その家族だけで、専門的な知識が多く必要な「精神障害」について話し合う、というのは少々無謀に感じます。

 

家族が癌になった時、医療機関に受診をせずに「家族の話し合い」で解決はしませんよね。

医療機関を受診し、専門的な治療を受け、家族も相談できる体制があり、その中で家族が病者を支え、一緒に生きていくわけですが、精神科領域の病気では、まだこの発想が生まれません。

 

悪化した精神疾患は「少し落ち込んでいる」というレベルではなく、正常心理学では語れないほどの重症例もあります。

 

家族だけで話し合って解決するレベルではないのです。

家族が無力だと言っているわけではありません。

どのような病気も、支える家族の力は病者にとっても専門家にとっても力強いものです。

 

しかし、家族だけで抱える必要はない、ということです。

この認識は非常に大切だと思います。

 

今回の2つの事件は、たくさんの人が犠牲になりました。

精神障害者=犯罪を起こす可能性が高い、という図式は絶対になりたちませんが、精神障害を抱えていても人を傷つけることは許されないことです。

 

精神障害が原因で、自傷他害行動の危険性が出るケースも確かにあります。

幻覚妄想状態などです。

判断能力が著しく低下した精神障害者措置入院」「医療保護入院などの制度を使い、非自発的に入院をさせるのは、周囲だけではなく当事者を守るためです。

 

もちろん医療や福祉が介入してすべてが劇的に変わるわけではありませんし、家族からSOSを出すことは非常にエネルギーのいる大変なことです。

しかしそれでも、外からまったく見えない病的な家族のなかに、第三者が入ることはとても重要なことなのです。

 

 

【実際の家族支援って?】

では、家族だけで抱えない、家族の中に人を入れていくためにはどのようなことができるでしょうか。

 

家族の誰かが精神疾患を患ったり、引きこもりになったりした場合、「保健センター」や「精神科」への相談が一般的です。

 

ただ家族が相談に行っても、いつまでも当事者である本人が相談に繋がらないケースはとても多いです。

 

以下は家族・当事者の支援一覧です

 

・精神科や心療内科、精神病院などの医療機関

・市の保険相談

・家族会

訪問看護

・カウンセリング(家族・当事者)

・ヘルパー

・電話相談

自助グループ

 

これらの中から必要な支援を組み合わせていくと、家族にとっても当事者にとっても意味のあるものになりやすいです。

 

精神疾患がある場合は、医療へのつながりは必須です。

家族だけでも繋がっていると、いざ入院が必要になった時や、当事者が治療を受ける気持ちになった時に役立ちますし、家族の相談場所にもなります。

 

医療と繋がることで、訪問看護を受けられたりもします。

 

精神科の訪問看護は、「当事者の人が外には出ないけど、このままだと良くないと感じている」というケースに受け入れられやすいです。

 

家に入られることを強く拒否する人もいますが、逆に受け入れやすい人もいます。

 

看護師によるバイタルチェックは「ケアをされる」という母性的な感覚を抱きやすく、家族も当事者も、家という一番落ち着く場所で生活の相談ができたりします。

 

家族会は統合失調症」「依存症」「引きこもり」など様々な悩みを抱えた家族が集まり、悩みを相談しあったり、病気について勉強したりする場所です。

 

私は家族会はとてもおすすめしているんです。

 

「孤立」して「病気に支配」された家族が、同じ状況を生きている別の家族に会うことで、支援者には相談できないようなリアルな悩みを共有でき、経験に基づいたアドバイスを貰えますし、家族自身が支えられる感覚を持つことができます。

 

しかし・・・

これだけ相談場所がありますが、先ほど書いたように、実際には家族が相談に自ら行くことのハードルはとても高いです。

 

「家族の恥」と感じる家族もいますし、「こんなことで行って良いのか・・・」と悩んだり、病気に支配された生活に疲れて、何も判断できなくなったり、一度相談に行った場所が合わなくて嫌な思いをされていたり・・・

 

これらの問題をすぐに解決することはできません。

ただ選択肢がたくさんあることをまずは知って欲しいです。

 

精神疾患は家族の闇だと秘密にされやすい問題です。

確かに未だに差別的な意見がありますし、相談するには勇気がいります。

 

精神疾患を抱えている当事者と家族が、自身の受けやすい支援をもっと気軽に受けられるよう、情報の発信も大切だと考えています。

 

大きな問題を家族だけで抱えている方たちが、少しでも減っていくことを願っています。

 

そして今回の事件で犠牲になった方たちのご冥福を心よりお祈りしております。